こよみのぺーじ 日刊☆こよみのページ スクラップブック  (PV , since 2008/7/8)
■うお座と水と大洪水
 人間の想像力はすごい!
 夜空の星をたどり、星座の形を想像した方なら、同じことを考えた方は大勢
 いらっしゃるのではないかと思います。

 何がすごいって、夜空の星の並びから星座の名が示す動物や神話の中の人や
 神など、様々なものを想像できた人間の想像力。オリオン座やさそり座、し
 し座のように、なるほどなと思えるものもありますが、多くは

  どこをどう見たら・・・

 と言いたくなるものばかり。
 私の想像力が足りないのかな?
 結構、いろんな妄想は浮かぶ方なんですがね。

 そんな私の想像力では、とうてい形を思い浮かべられない星座のひとつに、
 「うお座」という星座があります。うお座はもちろん「魚座」、魚の形をし
 た星座です。明るい星の少ない、地味な星座です。もちろん私には「魚」の
 姿は見つかりません。

 私を基準にものを測るのは危険かもしれませんが、おそらく私同様、この星
 の並びから「魚」を想像することが出来ないという方は少なくないと思いま
 す。しかし、いったん「魚座」という名前がついてしまうと、それが魚に見
 えようが見えまいが、そのあたりは魚の星座であり、魚と関係の深い様々な
 事物を象徴する星座だと言うことになります。
 そして、魚と言えば浮かぶものといえば・・・水です。

 現在、一般的に用いられている星座の主要な部分は古代ギリシャにおいて形
 作られたものです。そして古代ギリシャにおいては、宇宙は「火・空気・水
 ・土」の四元素で形作られていると考えられていました。うお座がこの四元
 素の中の「水」の要素を持つ星座だという考えになったことは「魚と水」の
 関係から容易に想像出来るものです。

◇七大惑星の集合と大洪水
 「七大惑星すべて下が水の気の星座、うお座に集まる日、大洪水が起こり
  人間は滅亡スルかもしれない」

 1499年の暦の中でドイツの占星術師、シュテッフラーがこんな大予言をしま
 した。シュテッフラーがこんな予言した七大惑星がうお座に集まる日とは、
 1524/2/5 (ユリウス暦、グレゴリオ暦に置き換えるなら1524/2/15)のこと
 でした。

 ちなみに、七大惑星とは太陽・月・水星・金星・火星・木星・土星の7つの
 こと。望遠鏡発明以前に知られていた7つの惑星です。位置関係の変化しな
 い星座を形作る星々、恒星に対して、星座の間を動き回る星を惑星(惑う星
 という意味)と言いましたので、太陽と月も惑星の仲間とされていました。

 現在は、天気のことは気象庁に尋ねるというのが一般的でしょうが、昔はそ
 んなありがたい機関はありませんでした。気象衛星もありません。ではどう
 したかというと、星は星でも気象衛星ではなくて星占いに頼ったのでした。
 嘘のような話ですが、星占いで天気を占うということが、昔のヨーロッパで
 は、よく行われていたのです。

 ノストラダムスの大予言ではありませんが、「そんなバカな」という話も、
 その予言の日が近づくと

  もし本当だったら・・・

 と不安な気持ちを呼び起こすものです。そんなあやふやなものでも人を不安
 にさせるものですから、当時としては当たり前に受け入れられていた星占い
 による気象予報(?)は、もっと現実的なもの。このシュテッフラーの大洪
 水予言は、そんなバカなと笑い飛ばせるものではなかったと思います。

 ではどうなったか?
 少なくとも人類が滅亡の予言は、私が本日の日刊☆こよみのページを書いて
 いること、そしてそれを読んでいる皆さんという「人類」がいることから、
 外れたことは明々白々。ついでに、運命の日前後のベルリンは日照り続きで
 一滴の雨も降らなかったとか。

 この運命の日、ベルリン近郊の丘の上に集まったドイツ貴族の面々はどんな
 気持ちで、よく晴れた空を眺めたのでしょうか。また、この日に備え、家財
 を売り払い、船を建造してその中で数週間を過ごしたというフランスのツー
 ルーズ大学学長オーリョールは。

  よい天気で何よりです

 といったのでしょうか? ちなみにオーリョールは「魚釣りの準備をしてい
 た」と言い訳をしたとか。

◇うお座だから大洪水?
 問題の1524/2/5の七大惑星の位置を計算すると確かに、すべてが黄経315°
 〜341°の範囲に集中しているのですが、その場所にたまたまあったのが水
 の気を持つと勝手に思われた「うお座」だったから大洪水予言となったので
 あって、もしそこに火の気を持つというおひつじ(牡羊)座があったら、大
 干魃になったんでしょうね(おひつじ座は、うお座のとなりにあります)。

 そこにあった星の並びから「魚」を想像するのか「羊」を想像するのかで結
 果は逆。魚か羊かなんて、元はといえば人間の勝手な想像の結果なのに。
 それに「うお座」と四元素の関係も、焼き魚が好きな人が考えたら

   「魚」→「焼き魚」→「火」

 で「火の気」と結びついたっておかしくはありません。かなり無理な論法の
 例ですけど。星座と四大元素の組み合わせも人間の勝手な思い込みであって
 意味のあるものではありません。

 昔はこんなことを本気で信じる人がいたのかと笑うかもしれませんが、こん
 な昔の話でなく、1910年のハレー彗星の接近時にも人類滅亡の噂で騒ぎは起
 こりましたし、富士山大噴火の予言などは何度も何度も再燃しているのをみ
 ると昔の話を笑ってばかりではいけないですね。気をつけましょう。

 ※参考 「おはなし天文学 4」(斉田博 著)

  (『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
   magazine.std@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)

オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2020/05/02 号

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