こよみのぺーじ 日刊☆こよみのページ スクラップブック  (PV , since 2008/7/8)
■同じ日付でも曜日が違う?
 平日は、朝早くて夜遅い生活がずっと続いてしまっているため、帰宅即終了
 ・・・気がついたら寝てしまっていて、朝になっている・・・ということが
 多くなってしまって、曜日の感覚が狂ってきました。
 昨日も目が覚めて、

  うわ、寝過ごした!

 と焦ってしまいました。
 頭の中の3割くらいは「あれ、昨日金曜日だったような?」と思う部分もあっ
 たのですが、残り7割くらいが「本当か?」と考えていて、多数意見に従って
 「焦った」わけです。やや目が覚めてから腕時計に表示されて曜日を確認し
 て、やっと安心。お恥ずかしい話でした。

 そんな私のドタバタはどうでもいいことですが、もし本当に

  金曜日の翌日が月曜日

 なんてことが有ったら、きっとちょっとしたパニックが起こるでしょうね。
 それくらい曜日(七曜)というものは私たちの生活に根ざしたものです。

◇曜日が違う
 そんな私たちの生活に根ざした曜日について、少し前に

  「曜日が違うのですが」

 という問い合わせのメールが、Web こよみのページの連絡用メールアドレス
 に届きました。いつものように、今日の話題に関係する質問箇所を抜粋させ
 て頂くと、その質問は次のようなものでした。

 ※以下、質問メール(T.Sさん)からの抜粋
 >本日、延喜15年8月18日について西暦換算しておりました。
 >貴ページでは、西暦915年9月29日(金曜日)とありました。
 >前後のカレンダーを見ようと、「便利.com」の同日を見ますと、
 >同日は日曜日と記されております。
 >
 >それぞれのシステムに対する、私の取り扱いの誤りかも
 >知れませんが、この違いについて、御教示ください。 

 ご覧のとおりで、こよみのページに問い合わせしてくださる方の多くはこの
 方のように丁寧な文章を書いてくださるので、ほっとします。こんな丁寧な
 文章で問い合わせされたら答えないわけにはいきませんよね。ということで
 早速調べさせて頂きました。

 ご質問の 延喜15(AD915)年8月18日(旧暦)をWeb 暦の「新暦・旧暦変換
 計算」の変換結果は、新暦915年9月29日となりました。
 で、この新暦915年9月29日の曜日をこよみのページの変換結果と、ご質問メ
 ールにあった「便利.com」というサイトのカレンダー(645-2300年)で確かめ
 てみると結果は以下のとおり。

  a.こよみのページ: 915年9月29日 金曜日
  b.便利.com   : 915年9月29日 日曜日

  ※変換に使用したサイトのURLは以下のとおり
   a.こよみのページの変換 http://koyomi8.com/9reki/9rekicgi.htm
   b.便利.com http://www.benri.com/calendar/915.html

 確かに違っています。およよ、これはどうしたことか?
 これは確かめなくちゃいけませんね。
 ということで私が最初にとった行動は・・・便利.comさんで900年のカレン
 ダーを表示することでした。そして、

  「なるほどなるほど」

 と納得。ほぼこの段階で謎は解けました。
 さて、この行動の理由、皆さんおわかりになりましたか?

◇曜日は連続、日付は不連続?
 さて、私が便利.comさんでAD900年のカレンダーを表示して確認したのは2月
 の日数です。見てみると2月は28日まででした。
 ま、当たり前ですね。

 でも、これで曜日が違っていた理由はほぼ解決です。
 なぜかというと、AD900年の2月が28日までしか表示されていないとすれば、
 便利.comさんのカレンダーは、おそらくグレゴリオ暦の置閏法でこの年を表
 示しているだろうことが分かったからです。

 この辺は「新暦」とか「旧暦」という言葉の曖昧な使われ方に問題があると
 言えるでしょう。日本で「新暦」という場合、狭義の意味では明治改暦以降
 (明治6年1月1日以降)に使われるようになった暦、グレゴリオ暦のことと
 なりますが、一般にはグレゴリオ暦と言うより西欧の主要国が使っている暦
 「西暦」ととらえられることが多いようです。元の質問にも

 > 延喜15年8月18日について西暦換算しておりました

 と有るとおり、日本の新暦と言うより、日本の新暦が準拠している西洋の暦
 を「新暦」と、すごく大雑把にとらえているために、解釈の差が出てしまう
 のです。

 ちなみに、こよみのページの新暦・旧暦変換計算で表示される「新暦」はそ
 の当時に西洋(の主要な国々)で使われていた暦への変換をおこなっていま
 す。そして、変換結果を表示するページには次のような注意書きを表示して
 います。

 「なお、西暦は、1582年10月4日まではユリウス暦を同年10月15日以後は
  グレゴリウス暦による暦日です」

 ん?「1582年10月4日まではユリウス暦」??
 お解りいただけましたね。問題の変換年はAD915年ですから、こよみのペー
 ジの変換結果表示された西暦はユリウス暦によるものでした。

 ここで、確認のために私が最初に、便利.comさんのカレンダーでAD900年の
 カレンダーを表示したのは、この年はグレゴリオ暦では平年になりますがユ
 リウス暦では閏年となるので、それを2月の日数で確認したのです。

 現在「西暦」と言えばそれはグレゴリオ暦を指すものですが、この暦が出来
 たのは(使用され始めた)としはAD1582年の10月15日から。それ以前はユリ
 ウス暦が使われていました。この改暦前の最後のユリウス暦の日付は1582年
 10月4日。

 おや? 10月5日から14日まではどこへ。
 そう、この10日間は、このグレゴリオ暦への改暦によって暦の上から消えて
 しまった失われた10日の日付なのです。改暦によって、日付には10日間のギ
 ャップが生まれてしまったのでした。改暦があると、こうした暦の日付の不
 連続が発生してしまうのです。

 では、曜日はどうなったかというと、改暦があってもその前後で曜日には不
 連続は発生しません。

  西暦 1582/10/ 4 木曜日 (ユリウス暦最後の日付)
  西暦 1582/10/15 金曜日 (グレゴリオ暦最初の日付)

 という具合に、日付は不連続ですが曜日は連続しています。
 何と云っても、グレゴリオ暦への改暦自体がキリスト教の復活祭(イースタ
 ー)の日付の計算の不具合を改称するためという宗教的な理由により行われ
 たものなので、教会の祭礼の関係から曜日に不連続を生じさせるような変更
 は出来なかったのです。

 まあ、この曜日の連続性が保たれた御蔭で、今回頂いたような問題もすぐに
 その答えが見つかるのでありがたい。東洋の暦では同様に日の干支は改暦が
 あっても連続に変化するものなので、過去の記録を調べるときにとっても便
 利。有ってよかった曜日や干支の連続性です。

◇最後に一言
 ちなみに、今回比較の対象とさせていただいた「便利.com」のカレンダーの
 表示ですが、これは誤りとは言えません。
 用途によるってはその方がよい場合もあります。
 グレゴリオ暦が生まれる以前までグレゴリオ暦を拡張することで、過去の出
 来事のあった日の季節感などを現在のものと比較する上では役立ちます。

 ただし、歴史上の出来事で日本の日付と西洋の日付の関連を考えるような場
 合には、まだ存在していない暦と比較してみ意味が無いので、そうした場合
 は改暦の影響も考慮する必要があります。

 ごく最近の問題であれば、悩むこともありませんが、何百年も昔のことなど
 を考える時には、「暦は変わってゆくものである」ということを忘れず、正
 しく扱う必要があります。使い方を間違えないように。

 そんなことを改めて考えさせてくださった、質問メールからの
 「同じ日付でも曜日が違う?」
 という話でした。

  (『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
   magazine.std@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)

オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2020/11/08 号

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