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■「年内立春」の話
 昨日は、今年の節分が124年ぶりに2/2となるという話を書きました。
 中身は節分の日が2/2になったというより、立春が2/3になったというはなし
 になってしまった気もしますが。

 看板と中身が微妙に違ってしまった点はさておき(さておくなって? ごめ
 んなさい)、立春の日付が現在私たちが使っている暦(グレゴリオ暦、いわ
 ゆる新暦)で変わるという話でしたので、ついでに旧暦時代の事情も書いて
 おくことにしました。

◇旧暦時代の立春の日付
 時々というか、ありがちな誤解の一つに

  「旧暦の一年は立春から始まる」

 というものがあります。これが、

  「旧暦の一年は立春の頃に始まる」

 であれば、間違いではないのですが「頃」の一文字がないと、やっぱり正し
 いとはいえません。確かに、立春は二十四節気では「正月節」とありますか
 ら、立春から旧暦の正月が始まると思ってしまうと言うこともあるのかもし
 れませんが、読者の皆さんならご存じのとおり、旧暦の暦月の名前を決めて
 いるのは立春などの「節気」の方ではなくて、次の「中気」の方です。

 二十四節気の正月中(正月中気のこと)は「雨水」。この雨水が含まれる暦
 月が旧暦の正月になるのであって、立春はこの旧暦月名の決定には関係があ
 りません。もちろん、まったく無関係というわけではありません。立春は雨
 水の半月(15日)ほど前にありますから、雨水が旧正月の真ん中辺りにある
 と考えると、立春が旧正月の始まり辺りに来ますから、平均すると旧正月の
 始まりの時期、つまり旧暦の一年の始まりは、立春辺りになります。

 ということで、アバウトに「旧暦の一年は立春の頃に始まる」と言うのは間
 違いではないけど「旧暦の一年は立春から始まる」はちょっとね。
 あ、「旧暦の一年は立春から始まる・・・こともある」ならいいか。

 さて、ここまで書いてきて記事の小見出しが「旧暦時代の立春の日付」であ
 ったことを思い出しました。しまった、日付の話、書いてませんでしたね。
 もちろん、立春の日付は旧暦でも変化します。それも大幅に。
 例として最近5年間の旧暦による立春の日付を示してみます。

  ・2019/2/4 旧暦12月30日
  ・2020/2/4 旧暦 1月11日
  ・2021/2/3 旧暦12月22日
  ・2022/2/4 旧暦 1月 4日
  ・2023/2/4 旧暦 1月14日

 いかがでしょう。最初に書いた年月日は新暦によるもの、その後に旧暦の月
 日を並べてみました。新暦の方の日付は2021年だけ他の年と1日違う以外は
 ほぼ一定ですが、旧暦の方は結構変わっていますね。

 旧暦の暦月の区切りは新月の日ですが新月と新月の間隔は平均すると29.53
 日ですから、12倍すれば354.36日で、太陽が天球を一周する自然の1年の長
 さである回帰年の365.2422日には10日以上も足りません。かといって13倍す
 れば、383.89日と今度は20日近く長くなってしまいますから、回帰年の間
 隔で巡ってくる立春の瞬間が毎年同じ日付になるはずがないのです。

 でも、新暦のように35年間も立春の日が2/4だった後で、2021の立春が2/3と
 なるとなれば「おや?」と思うことになるでしょうが、前述のように毎年盛
 大に日付が違っていた旧暦時代なら、立春の日付が変化するなんて

  そんなの、当たり前でしょ?

 で片づいたでしょうね。誰も不思議になんて思わなかったはず。
 ただし、そんな旧暦時代でも、月日どころか「年」まで違うと、あれれ?
 と思うこともあったはず。その代表的なものとして古今集の冒頭を飾った
 年内立春について読まれた次の歌を掲げましょう。

  『年の内に 春は来にけり ひととせを 
        こぞとや言はむ 今年とや言はむ』 (在原元方)

◇年内立春の年は珍しい?
 前述した歌は、ふるとしに春たちける日よめるとした、在原元方の和歌。流
 石に古今集の冒頭を飾るほどの歌ですから、どこかで耳にし、或いは目にし
 たことのある歌なのでは無いでしょうか。

 歌の意味は「年が変わらないうちに立春が来てしまったこの年を、去年とい
 うべきか、今年というべきか」といったところでしょうか。

 このように新年を迎える前に立春がやってくることを「年内立春」といいま
 す。ちなみに、年が明けてから立春がやってくる場合は「新年立春」といい
 ます。

 旧暦と言われる暦が実生活でも使われていた時代に詠まれた歌が、わざわざ
 年内立春に言及していると云うことは、さすがに、年が改まらないうちに立
 春を迎えるということは旧暦時代でも珍しかったのでしょうね・・・?

◇確率は1/2
 もちろん皆さん「年が改まらないうちに立春を迎えるということは旧暦時代
 でも珍しかった」というのは間違いだとお解りですね。だって、既に例とし
 て掲げた2019〜2023年の間の5回の立春のうち、2回は旧暦の12月にありまし
 たからね。この5回の例だけ見ても、結構な頻度だったということが推測され
 るでしょう。

 旧暦の暦月の名前を決めるのは二十四節気の「節」ではなくて「中」の方と
 いうのは既に書いたとおり。旧暦の正月を決めるのは正月中である雨水。
 今年の雨水は新暦では2/18。立春同様、この日付も時々1〜2変動する程度で
 ほぼ一定です。

 旧暦の正月はこの雨水を朔日から晦日までに含む月です。つまり旧暦では雨
 水が1/1〜1/30(小の月なら1/29)の範囲で変化するわけです。
 立春と雨水とは15日離れていますから、立春が無事に旧暦の新年に含まれる
 ためには、雨水が旧暦の1/16以降の日付となった場合となります。

 残念ながら、今年の雨水は旧暦では1/7にあたっていますから立春は旧暦正
 月の内には含まれないことになります。

 立春が旧正月に含まれる条件が、雨水の日付が旧暦の16日以降でなければい
 けないと云うものですから、そのそうなる確率は約1/2 となります。
 逆に言えば、「年内立春となる年は、全体の1/2 」ということが出来ます。

 全体の1/2 が年内立春となるといわれれば、全然珍しい現象でないことが判
 ります。ちなみに次の立春、2021/2/3は旧暦では12月の日付なので「年内立
 春」ということが出来ます。

 ついでに言えば、次の旧暦の1年(新暦では2021/2/12〜2022/1/31)の間に
 は、1つも立春の日が含まれません。なんか寂しい感じですね。

  (『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
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オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2021/01/30 号

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