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■独立記念日に「建国記念の日」の話
 今日の記念日にあるとおり、本日はアメリカ合衆国とフィリピン共和国の独
 立記念日です。それぞれ、1776年と1946年のことなので、本日(米国の場合
 時差があるのでもう少しだけ先ですけどね)が建国から245周年と75周年の
 記念日ということになります。

  両国の皆さん、独立記念日 おめでとう

 1776年の米国にしても245年前のことですから、独立に関する様々な資料が
 のこっていて、建国を記念する日がはっきりわかっていいですね。
 その点で言うと、私たちの暮らす日本の建国の日がいつなのか、これがね、
 そんなにすんなりとはわかりませんから、はっきりと建国の日の年月日が判
 る国って羨ましい・・・。

  え、2/11が日本の「建国記念日」じゃないの?

 おっしゃる通りで、一応現在は、「建国記念の日」という祝日があって、そ
 れは2/11なのは事実ですが、これが「建国記念日」かというと、いろいろ問
 題があって、「建国記念の日」という祝日の日付として、この日と決まるま
 でにはいろいろと、すったもんだがありました。それはひとえに、日本の建
 国日がいつかなんて、本当のところは判らないからなのです。いいな、アメ
 リカやフィリピンは建国の日がはっきりと判って。

◇現在の「建国記念の日」の日付
 国民の祝日に関する法律には

   建国をしのび、国を愛する心を養う

 というのが建国記念の日の意味として書かれています。
 国民の祝日に関する法律には、それぞれの祝日の日付と意味が書かれており
 その書き方は次の例のようになっています。

 元日 一月一日
  年の始めを祝う。

 成人の日 一月の第二月曜日
  おとなになつたことを自覚し、
  みずから生き抜こうとする青年を祝いはげます。

 建国記念の日 政令で定める日(2月11日)
  建国をしのび、国を愛する心を養う

 おや、なんだか建国記念の日だけ、他と書きぶりが違う・・・この条文を読
 んだだけでは、建国記念の日が何月何日に当たるのかが判りません。

 他の祝日の多くは、元日のようにその日付が直接書き込まれています。また
 成人の日のように「一月の第二月曜日」のような日付が移動するルールが書
 き込まれていますから、カレンダーに並んだ日付にそのルールを適応すれば
 その祝日が何月何日かを知ることが出来ます。

 ところが、この建国記念の日だけは、「政令で定める日」となっていて、こ
 の建国記念の日の日付を定めた政令に当たらないと日付が分かりません。こ
 の政令は

 昭和四十一年政令第三百七十六号
 建国記念の日となる日を定める政令
 「内閣は、国民の祝日に関する法律(昭和二十三年法律第百七十八号)第二
  条の規定に基づき、この政令を制定する。
  国民の祝日に関する法律第二条に規定する建国記念の日は、二月十一日と
  する。」

 というものです。政令の名前が「建国記念の日となる日を定める政令」とそ
 のものズバリ。それだけのための政令です。なぜ、建国記念の日だけ、こん
 な回りくどい日付の決め方をしたのでしょうね?

 実は、現在の建国記念の日となっている2/11という日付は、明治憲法下の祝
 祭日としては、「紀元節」という初代天皇とされる神武天皇の即位を記念し
 た祝日でした。この点では「なんだ、昔の祝日の焼き直しか」という気もし
 ますがそう簡単に「焼き直し」は出来ない事情がありました。

 慣れ親しんだ祝日であった紀元節ですので、戦後に新しい祝日の候補リスト
 を作った際にも当然これが入っていたのですが、紀元節は GHQによって、国
 家神道の復活に繋がるものとみなされ、その復活は認められなかったのでし
 た。

 GHQ の統治が終了した後も、戦前の紀元節の日付をそのまま建国記念の日の
 日付にすることについては賛否が分かれ、なかなか決着がつかず、祝日とす
 ることが出来ませんでした。

 戦前の体制への批判、反省などもあってか建国記念の日の候補となった2/11
 という伝説上の神武天皇の即位日を根拠とした日付に抵抗感のある人々が多
 かったことも、建国記念の日の祝日制定が遅れた理由だと考えられます。
 その結果、

  「建国記念の日」を祝日にするけれど、日付は決めきれないので別途

 ということになってしまったようです。

◇憲法記念日の祝日化は昭和41年
 「建国記念の日」が祝日化されたのは昭和41年。
 [体育の日」と「敬老の日」、そして「建国記念の日」がまとめて祝日法に
 書き加えられました。

 「建国記念の日」の祝日化自体についても、やはり抵抗感があったためでし
 ょうか、「体育の日」と「敬老の日」という祝日化することについて誰一人
 反対することが無さそうな二つの祝日と同時に祝日化を図られています。
 なんだかどさくさに紛れて祝日化してしまったかのようです。

 現在の「建国記念の日」の日付は、日本書紀に書かれた初代の天皇とされる
 神武天皇の即位の日付を、現在の暦の日付に置き換えたものです。ですが、
 この日本書紀に書かれた日付については、歴史的事実とはとても思えないこ
 とから、そんないい加減な日付を「建国記念の日」の日付としてよいのかと
 いう批判はやはり根強く残りました。

 確かに日本書紀の記述は伝説的というか神話的なもので、歴史的事実という
 のはちょっと無理がありますから「事実」を問題とする方にとっては、そん
 な日付を認められないことだったのでしょう。

 しかし、考えてみれば日本のように長い年月をかけ、自然発生的に生まれた
 国家の生まれた日が伝説的で有るのは致し方なく、国民の多くがその伝説を
 知っていれば、建国を祝う祝日の日付が歴史的な事実である必要はないとい
 う至極常識的な考え(私はそう思う)によって、旧来の紀元節と同じ日付に
 落ち着いたようです。そのため、この日は建国の日ではなくて、

   建国を記念する日

 なのでした。
 アメリカ合衆国やフィリピン共和国のように、明確にその建国の日(独立記
 念日)の資料が残っているのは、こんなめんどくさい日付の問題を抱える日
 本の暦好き(誰のこと?)には羨ましいですが、そんな記録も残らないほど
 昔から存在し続けていた国であるということは、他の国々から見ると羨まし
 いものなのかもしれないなとも思います。

 最後は、ちょっとだけ「優越感」に浸りつつ、再度アメリカ合衆国の皆さん
 とフィリピン共和国の皆さんにお祝いの言葉を残して本日の暦のこぼれ話を
 終了することにいたしましょう。

 本日は独立記念日、おめでとうございます!

  (『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
   magazine.std@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)

オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2021/07/04 号

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