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■本日は「欲日」、四万六千日の話
 今日、7/10は「四万六千日(しまんろくせんにち)」と呼ばれる観世音菩薩
 の特別な縁日です。

 なぜ、「四万六千日」なんていうかというと一度のお参りで46000日分の御
 利益が得られるという、それはそれは有り難い日だからです。

 46000日分のお参りに相当する御利益というとどれほどのものなのか。
 なかなかピンときませんので、年換算してみましょう。1年を365.25日とす
 ると

  46000 ÷ 365.25 ≒ 126 (年)

 これはすごい!
 人生百年時代とかいわれるようになりましたが、そんな長生きの百年時代に
 なっても、まだ26年分もおつりがきちゃいます。ちょっと効率よすぎるんじ
 ゃないかと思えるほどですね。

◇功徳日(くどくび)
 縁日とは神仏とこの世の有縁(うえん)の日。ある神仏の降誕・示現など、
 特別の縁があるとして祭典・供養が行われる日で、この日に参詣すると大き
 な功徳があるとされます。本来は「会日(えにち)」であったものが、なま
 ったものだと言われています。

 本来、縁日は年に一度とか二度とかしかありませんでしたが色々な神仏の縁
 日がある御蔭で、今ではほぼ毎日なにかの縁日が巡ってくるようになりまし
 た。縁日の日取りは暦の日付で決まっているものや日の干支で決まっている
 ものなどがあります。

 縁日は特別な功徳のある日ということから功徳日ともよばれ、この日お参り
 すると、十日分、百日分、千日分、四万六千日分、九万九千日分など、一日
 でそれこそその万倍もの効果があると言われます。

 特別な功徳があるとなると、やはり人は現金なもので縁日は他の日よりずっ
 と大勢の「御利益を求める人々」でにぎわうようになりました。そのためい
 つしか縁日といえば、お祭りみたいなものと思われるようになってしまって
 います。まあ、神仏と有縁の日なので、本当に祭りだといっても間違いでは
 ないでしょうが。

 この十日分・・・九万九千日分は、だいたい最初はつつましい日数(十日と
 か)から始まって、次第次第に大きな数字になってきたようです。
 あっちが十日詣でなら、うちは百日詣で、それならうちは千日詣で・・・と
 なっていったことは想像に難くありません。

 エスカレートするのはわかりますが、あんまり大き過ぎるとなんだか有り難
 みが薄らいでしまいますね。1日お参りしただけで、多分一生涯の長さより
 長い126年分(しかも、休みなしで考えてこの年数)の御利益じゃ、いくら
 なんでも水増しがひどすぎます。ここまで水増しされると、料理なら味がつ
 いているのかどうかもわからなくなるほどでしょうね(私は鈍感な味覚の持
 ち主ですが、そうでなくても46000倍に薄めたら・・・)。

◇「四万六千日」と「千日詣」
 既に見てきたように四万六千日といえば 126年。
 人間の一生分+αです。
 人間の一生分のお参りの功徳があるということから

  一生 → 一升

 と掛けて、その一升分に含まれる米の粒の数 46000粒がこの日の功徳の日数
 とされたと言われていますが、さて本当かどうか(大体一升に含まれる米粒
 の数はほんとうに 46000粒なんだろうか? 数えてみよう・・・とは思いま
 せんがね)。

 ちなみに四万六千日は別名「千日詣」とも呼ばれます。
 元々はこっちが最初にあって、それが既に書いたような「競い合い」の心理
 で四万六千日まで増えてしまったようです。かなりひどいインフレーション
 ですね。

◇四万六千日と鬼灯市
 東京都台東区の浅草寺(せんそうじ)境内では、例年 7/9・10には鬼灯市
 (ほおずきいち)が行われ、風物詩となっています。この鬼灯市は江戸時代、
 明和年間(AD1764〜1772)に始まったとされますので、かれこれ 250年あまり
 続いた行事ということになります。

 この日は四万六千日の日ですから、昔から浅草寺には沢山の参詣者があり、
 この参詣者を狙って雷除けの呪い物として赤トウモロコシが売られていたそ
 うです。ところが明治期にこの赤トウモロコシが不作の年がつづき、困った
 浅草寺から雷除守護(かみなりよけしゅご)の札が出されるようになりまし
 た。この頃から雷除けの呪い物が赤トオモロコシから鬼灯に取って代わり、
 これが鬼灯市となったとされます。

 余談ですが、鬼灯市は元は愛宕神社で地蔵様の縁日の日に開かれていたとの
 ことです。それが後発の浅草寺の鬼灯市が有名になってしまって、今では鬼
 灯市といえば浅草寺と言われるほどになってしまいました。

◇功徳日は「欲日」
 功徳日にお参りするといつもの何十倍も何万倍も功徳があると言うことで、
 普段はまったくお参りなどしない人まで御利益を求めてお参りをします。
 普段から信心深い人からすればいい迷惑(?)ですね。
 こうした御利益目当ての人が沢山押しかける日であることから功徳日は別名

   欲日(よくび)

 とも呼ばれます。
 私は信心深くはありませんが、皮肉屋なので功徳日よりこの「欲日」という
 名前のほうに惹かれてしまいます。

  さあ、今日は浅草はこの「欲日」に集う人々で大混雑かな?

 と普通の年なら締めくくりとして書くところでしょうが、残念なことに浅草
 寺のある東京は現在、武漢肺炎による4度目の緊急事態宣言下。46000日の功
 徳が積めちゃう欲日であっても、人出はあまり見込めませんかね?

 まあ、欲も生きた人間であればあって当たり前。
 出来れば来年は、そんな当たり前の人間の欲をかなえてくれる「欲日」の参
 拝が出来る様になることを祈りましょう。
 おっと、もしかしたら現在のテクノロジーを活用して

  「オンラインでも可能、四万六千日詣!」

 なんてこと、どこかがやってるかもしれませんね?
 だんだんとインフレが進み肥大化した四万六千日のように、一歩進んだオン
 ライン詣でなんかを考えつく人がいても不思議じゃないなと考えてしまう、
 かわうそです。人間の欲には限りがありませんからね。

  (『暦のこぼれ話』に取り上げて欲しい話があれば、
   magazine.std@koyomi.vis.ne.jp までお願いします。)

オリジナル記事:日刊☆こよみのページ 2021/07/10 号

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